2017年8月3日木曜日

各分野の生い立ちがわかる学問の歴史の本 ー数学、物理学編ー

本記事で紹介する本


前回は哲学の入門書を紹介しました。今回から、数回に渡り、学問の歴史の本を紹介します。

教科書は出来上がった概念をパッケージ化して解説したものです。一方で、歴史書は、誰が、いつ、どこで、なぜ、どのようにして、その概念を生み出したか?について、記載されています。これは、概念がどのような着想から生まれたのか、という観点から見た時に、新しい概念を生み出す研究活動においても非常に有用です。ノーベル賞受賞者の朝永振一郎博士も、「数学を理解するには、数学が作られたときの数学者の心理に近づかなければいけない」という旨の文章を残しております。これは数学に限らず、どの学問にもあてはまると言えます。

今回は、学問の歴史の中でも、手始めに、数学、物理学の歴史の本を2冊ずつご紹介したいと思います。

    目次
    ・数学序説 吉田 洋一 赤 攝也
    ・零の発見―数学の生い立ち 吉田 洋一
    ・物理の歴史 朝永 振一郎
    ・物理講義 湯川 秀樹

数学序説 吉田 洋一 赤 攝也


前提知識:高校数学、学部1年レベルの数学
キーワード:数学史

数学の啓蒙書で著名な吉田先生の本です。エウクレイデス(ユークリッド)の原論から始まり、幾何学、微積分、抽象代数、集合論、などの数学の歴史を概観する一冊です。位相幾何学などの現代数学までは触れず、およそ学部1年で習う数学分野について、その歴史が書かれています。細かい計算は省いて、全体の流れを読むという読み方でも、効率が良いかもしれないです。いろんな数学者が居ますが、やはり印象的なのは、21歳のときに決闘でこの世を去った、群論の創始者の一人であるエヴァリスト・ガロアですかね。。。

零の発見―数学の生い立ち 吉田 洋一


前提知識:なし
キーワード:数学史、零、実数

こちらも吉田先生の本です。といいますか、こちらは一般向けの本で、吉田先生の代表作といえばこれ、という本です。タイトル通りで、インドでどのように零が発見されたか、そして零がどのようにヨーロッパに浸透し現代にいたるか、について書かれています。また、「直線を切る」と題して、実数の連続性についても書かれています。一般向けなので、各数学概念よりはストーリー重視です。世界史の内容も含まれているので、読み物として楽しめる内容になっています。

物理の歴史 朝永 振一郎


前提知識:なし
キーワード:物理学史、古典力学、電磁気学、相対論、量子力学、素粒子論

朝永振一郎先生(編)となっていますが、高林先生と中村先生が中心に書いています。お二人ともご専門は素粒子論です。主に素粒子論の話にもっていくことをゴールにしているので、流体力学や解析力学については、あまり記載されていません。数式をほとんど使わずに物理学の歴史の流れを解説した本です。ただ、深い内容まで説明するので、ある程度キーワードに記載された分野の勉強をしたあとに読むのが適切かもしれないです。特に、量子論の設立の過程は、物理学が注目を集めていたときで、非常に面白いです

物理講義 湯川 秀樹


前提知識:なし
キーワード:物理学史、古典力学、電磁気学、相対論、量子力学、素粒子論

ノーベル賞受賞者である湯川先生が、1974年に日本大学で行った3日間の集中講義の内容を文字に起こしたものです。講義を文字に起こしたものなので、ボリュームは軽めです。
こちらも、キーワードに記載された物理学の分野について、当時の人間模様なども交えて、深く分かりやすく、解説されています。ここらへんの著名な先生の本を読んで思うのは、皆さん、どのように学問が作られてきたか、を深く理解されていることです。良い研究をするには、やはり教科書にのるような過去の業績を深く理解することも大切なのだと思います。
本記事で紹介した本


0 件のコメント:

コメントを投稿